美容院ジプシー
父から「パーマ屋に行ってきたよ」というメッセージと共に母の写真が送られてきた。
前から、横から、後ろから。
交通量も多く踏み切りもある道を、足の悪い父が車椅子を押しながら歩くのは本当に大変だっただろう。なので、まず労う。順番を間違えてはいけない。先に褒めた。
その後、本題に。肝心の母の髪型が変だ。どう頼んだらそうなる?とツッコミどころ満載の非常に残念なヘアスタイル。
「これ、カリスマじゃないでしょ?」と聞くと、「あの人、休みだったんだよ」と。
うちでは母のお気に入りの美容師さんをカリスマと呼んでいて、本当に腕がいいのだ。随分前に母が「カリスマ美容師を見つけた」と大喜びしていたので、その名が付いた。何のひねりもない。
前回私が連れて行った時にはカリスマがお洒落に仕上げてくれたのに、なんてこった。
「これは無い!」と声を大にして全否定したい髪型になっていたが、せっかく連れて行ってくれた父に悪いので堪えた。と思う。心の声が漏れていなければ。
母の髪が早く伸びてくれる事を願うばかりだ。
今回は失敗だったけど、母に『いつもの美容師さん』がいる事が羨ましい。
担当してくれる美容師さんによって仕上がりが変わるのが美容院。
そんな美容院選びを引っ越す度にしなくてはならないのが転勤族の妻なのだ。お気に入りの美容師さんと出会えても、付き合いはそう長くは続かない。
普通に美容院を探すだけなら、そこまで大きな問題ではないのかもしれない。この問題を大きくしている要因は私の髪質だ。多毛・剛毛・くせ毛の三拍子揃った私のボンバーヘッドをどうにかしてくれそうな美容院を探さねばならない。いい美容師さんが見つかるまでは、そろそろ美容院に行かなきゃな、と思うだけで憂鬱になる。
昔、美容学校に通う友人の練習台になっていた時にこう言われた。
「この髪の量と質で他の人と同じ値段なんだからお得だよ!」
お得。確かに。その時から私は、このポジティブワードを胸に、初美容院での「髪の量、すごく多いですねー」という攻撃(ただの感想。言われ過ぎて被害妄想。)を受け流している。パンチがあるのは毛量だけじゃないぞよ。硬くて太い髪は指に刺さる事もあるから気を付けよ、と心の中でつぶやきながら。
ちなみに友人にはその後、「時間が掛かり過ぎる」との理由で練習台を断られた。そうだよね、カットモデルじゃなくて練習台だもの。でも、頼まれてやっていた気がするんだけど…。悲しい思い出。
今の私は美容院選び真っ最中。早急に候補となる美容院を絞らなくてはいけない。
美容院ジプシーが始まる。お気に入りの美容師さんを見つける旅だ。そう易々と見つかるものではないが、初めて行くお店での緊張感は出来るだけ味わいたくない。早く見つかりますように。ついでに楽しい会話が出来て、有益なご近所情報も手に入りますように。