奇跡を無駄遣い
奇跡が起きた。
なんと、昨日見失った福毛が見つかった。
なんか足がこそばゆいと思って見てみたら、スリッパにくっ付いていた。
捨てる前に長さを測ってみると、15.4センチ。わぉ!
いやいや、これじゃなくて。
今日は知人と会うため、珍しく街に出掛けていた私。
そろそろ解散、というタイミングで一緒に駅前の歩道を渡っていた時、あまり起きて欲しくない奇跡が起きてしまったのだ。
信号待ちしていた時から「正面に似たような格好の人がいるな…」と気付いていた。シャツワンピースに黒のパンツ。白いスニーカー。ありがちな格好なんだけれども。
黒のパンツと白いスニーカーは同じ物でないにしても、見た目はそう変わらない。問題はシャツワンピースだ。すれ違いざまにお互い確認したと思う。シャツワンピースの色柄、形が完全に一致、全く同じ服であると。
そしてもう一人、それを確認した人物が。
口には出されなかったけど、目が語っていた。
「お揃いコーデやったな」と。
私も無言で頷いた。
大人は余計な事を言わない。
たまたま今日、同じ服装で出掛けることを選んだ見ず知らずの二人が、同じ時間に同じ場所ですれ違う確率って『ものすごい奇遇ですねー』って喜び合えるレベルだと思う。
実際はとても気まずかったけれども。
喜べない奇跡的な出来事に、なんだか奇跡を無駄遣いした気になったのだった。